富士登山は、人生の夢の一つだった。
大げさかもしれないが、虚弱体質なので、富士山を登るということは、相当な覚悟がいるもんだという気がしていた。行きたいと思いつつ、登れるか不安で、「人生の節目に行こう」と思いつつ。でも、節目っていつだよ。てな感じで月日は過ぎていき。
仕事でぽんっと登ることになった。
今は富士登山ブームで、毎日のようにいろんな会社から富士登山ツアーが出ている。
私は添乗員だから高山病にかかるわけにもいかず、頂上まで不安だった。
が、なぜだか頂上までは1回もつらいと思うことなく登れてしまった。
岩場を登るのが楽しくてしょうもなく。名字のせいか?
でも途中高山病でリタイアして泣いて下山した子とかいて切なかった。
外国から来て、もう帰るらしかった。
「不安で不安で夜眠れなくって」と言っていた夫婦も、八合目でストップしてしまった。
決して簡単な山ではない。と後からドライバーさんが言っていた。
八合目山小屋で仮眠して、深夜1時半に頂上めがけて出発。
小屋を出て、あっと息を呑んだ。
真っ暗闇の中、頂上を目指して行進する、光の列。
こんなにたくさんの人が、蛍みたいになって、ちゃんと並んで、一つの場所を目指している。
登ってきたときは夕方でまだ明るくて、8合目までは人もそんなに多くなかったので、
光景の違いにびっくりする。
なかなか見れない眺めだ。特別な山なんだな、と思う。
みんな、ちゃんとヘッドランプは買ったんだな、とか、余計なことも考える。
蛍の行進に見慣れると、今度は街の光が綺麗だった。
夕方は霧だらけで分からなかったが、気づけば雲の上に来ていたようだ。
雲の向こうに見える街は小さくかわいらしく、普段小さい星が間近に大きく見える。
いつもと逆なんだな。
これは、登らないと見れない。
きっと、いろんな不安とかしんどいのとかを乗り越えてここまで来たからこそ、
こんなに綺麗に見えるのだろうね。
頂上まで着くと、一気に気が抜けて、眠くなったり気持ちが悪くなったりして、
これが高山病というやつか?と思ったりしたけど。
睡眠不足と空腹と区別がつかないもんだ。
飲料の価格日本最高峰の頂上で、1本400円の缶ココアを購入。(まずかった。)
ご来光を見た時は、今度は晴れの時にもっかい来てもいいな。(雨だったので)
などと考える。が。
下山がすべって転んで大変で大変で、もう二度とあそこを降りたくない。
なんか、だまされたような気分だ。
とにかく、終わった。全員無事に、新宿まで帰ってきた。
夢だったことが、ぱっと決まってあっという間に終わった。
でも短い間にたくさんの人に会って、仕事なんで山小屋の人とかガイドさんに怒られたりもして、
思い描いていたのと全く違って面白かった。
あっという間なりに、やっぱり富士山はすごい。
この勢いで情報を探したら、
ぽんっとライターの仕事が不定期でできることになった。
ぽんっと。
良さげな団体の仕事である。相当、嬉しい。
まだ分からないけど、人生の節目かもしれんなー。